砂漠の回想 その1

あたり一面【砂の海】だった。 焼け付くような日差しに照らされて宝石がきらめくような砂のうねり。 立っているだけで目眩がした。錯覚にとらわれた。スニーカーの感触がなくなって素足が砂の大地に のめりこみ足の裏が地球の中心までつながっている・・・『ワ・タ・シ・死・ぬ・の・か・な・・・』 何かに寄りかかろうと傍らの赤いツヤツヤとしたボディーに一瞬、左肩が触れた。『あちっっつつつ』 卵が熱したフライパンに落とされた瞬間も、こんな感じだろうか? カマロってやつだったな、これは。

そうそう、コンバーチブルでフリーウェイを颯爽と駆け抜けるイメージに惹かれていたけど、 この時季に砂漠に行こうなんて狂気のドライブには、せめて鉄板の屋根くらいついてないと・・・ とおどかされ、頭まで真っ赤なカマロにしたんだっけ。 『借りるならアメ車じゃなくちゃね・・・』と、これがそもそものマチガイ・・・と気づくまであと数時間。

リバーサイド(RIVERSIDE) から15号線に乗ってしばらくしたあたりで 『この先は55マイル一定くらいで、じっとがまんの走りがセーフか、・・・』 と思った途端、目の覚めるようなブルーメタリックのコルベットに追い越された。 助手席のモデルみたいなお姉さん、煙るようなブロンドが風になびいてる。 『きっとあのカップルは砂漠なんか迂回してフリーウェイをラスベガスまで行くんだ・・・そうに決まってる。』 とりあえず自分を納得させた。 それにしてもなんてキレイなク・ル・マ !  あのまま空に溶けそうだ。 でもあの《BLUE》はニッポンの光ではああは見えない。ここは光が何もかもを鮮やかに映し出す。

バーストー(BARSTOW) が最後の文明・・・と聞いていた。  ガソリン満タン、気の利いた大きさの発砲スチロールのアイスボックスにロックアイスとクアーズと (おぉっと、ナイショ、ナイショ)セブンナップとミネラルウォーターとオレンジとバナナ、 ビーフジャーキー、それにナッツもろもろを詰め込み、何かあった時(?!)に備えた気分で フリーウェイとサヨナラ。すれ違う車もない道に入り、たぶん、少し覚悟した。

西部劇の舞台のようなサボテン・・すらない砂の世界。『こんなところが、あるんだ・・・コノ国は。』 昔、砂漠の真ん中にカジノをつくろう・・・なんて馬鹿げた偉業をなしとげたオトコがいたらしいけど、 建設途中のホテルフラミンゴを見に、次から次へ小洒落た実業家(もちろん裏稼業関係者)が これまた白いスーツでバシバシに極めて高級車を砂にもぐらせながら走ったであろう道。 いつのまにか道が整って、むこうみずなドライブコース(?)にまで成長したものの、 ニッポンの【ドライブ】とは根本的にわけがちがうテンションをもとめられる環境。 それでいてラクダに頼るほどじゃない、絶妙な砂漠! 道に迷ったなんてことは起こりにくいけど、もし違ってたら、気づくのに数時間かかる破格の距離感覚。

おそらく昼はとうに過ぎた、と思った瞬間のこと。 カマロはアメ車の例にもれず、アメ車らしい堂々たるストライキに突入した。 ギアが腑抜け。『トランスミッションが壊れるなんて、カンガエラレナイ・・・ウ・ソ・・だ?』 ・・・・・・・・・・! クーラーを最大限にして抵抗した・・・意味のない行為。 『外に出たら焼け焦げだナ。きっと。』 ボンネットでも全開にして応援を呼ぶか? ロードサービスなんてもんも気軽にサービスできないとこまで きちゃったみたいだし。どだい、どうやって呼ぶんだろ? エンジンかけたままクーラーつけっぱなしは環境によくないよ・・・いまさらだけど。 重くとざされたドアを恐る、オソル、あけ・・た・・・途端! 熱風が押しよせた。 『消防士にはナレナイナ・・・』 気が遠くなった。

___To Be Continued.
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